歯科治療理念

「患者さんの歯を治療する時、常に自分の歯を治療しているつもりで処置をすること」

 歯科医師になって15年。これだけは守って治療してきました。

私の場合、自分の治療目標をクリアするには、1回の処置にかける時間は最低でも30分は必要と思っています。理想は1〜1.5時間くらいあるともっと精度の高い治療ができるし治療期間も短くでき、患者さんへの負担もかなり減らすことができると思います。

しかし残念なことに、現行の健康保険制度では治療方法、手順が決められていますから1回の処置になかなか時間をかけられません。

ここで日本とアメリカの歯科治療費の比較を例にしてみます。
(日本の保健診療での治療費を1とした場合)

ここに上げた例はどれも比較的高頻度におこなわれている治療です。他の治療もほぼ同じくらいの差があると思います。

この治療費で歯科医院を経営していくために通常は1人(1回)にかける治療時間を短くして患者さんの回転率を上げる。もうひとつ、診療時間を長くして夜遅くまで診療したり、日曜日や祝日に診療して診る患者さんの数を増やすことです。当然、削れる経費はとことん削ります。

「こんなことで良い治療ができるのか?」そんな疑問をいつも抱いて診療にあたっていました。

国の健康保険は必要な制度だと思います。全ての国民が、病気になってもすぐに病院を受診することができる。世界的にみてもすばらしいシステムで長寿世界一も当然かと思います。

しかし、歯科の健康保険の治療方法、治療費はいくらなんでも低すぎです。
それでは治療費が低いのだから、手抜きで良いのか?
そんなことは無理です。
「保健だからすぐ壊れた」なんて、患者さんには関係ありませんよね。

ということで結論として

「可能なことは健康保険の範囲内で」
※ 初診、再診、各種検査、診査、レントゲン、抜歯(矯正以外)簡単なむし歯の治療、等が含まれます。

「それ以外は健康保険外(自由診療)で」

※ 主に補綴物(被せ物、詰め物、入れ歯、等)

という治療スタイルになりました。本当は誰もが最良の治療を一部の負担で受けることが理想だとは思いますが、、、

余談ですが、、、

さらに悲惨なのは歯科技工士の方たちです。保健の治療費が決められてますから歯科医師はより技工料金の安い所に仕事を依頼する傾向にあり、結果ほとんどの歯科技工士は薄利、多売を余儀なくされ、歯科技工所に勤務している技工士では1週間で自宅に帰れたのが2〜3日なんて話しも聞いたことがあります。

このような現状ですから当然、離職率も高くなります。

 歯科技工士の離職率

    (1)25~29歳:74.9% (平成16年時より4.9%増) 7割5分
        13,112(H9~H13交付者数)-3,291(H18就業者数)=9,821
      9,821÷13,112=74.9
    (2)25歳未満:79.0% (平成16年時より0.2%減) 8割
        11,523(H14~H18交付者数)-2,417(H18就業者数)=9,106
       9,106÷11,523=79.0
       ※  前提条件:各年度ごとの交付者年齢を20歳とする。
       ※  資      料:『衛生行政報告例』(厚生労働省大臣官房統計情報部編)

2007.9  調査企画部作成

このままでは近い将来歯科技工士不足に必ずなります。そしてよりよい歯科医療を提供することが益々難しくなるのを不安に思います。